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コロナ禍でリアルな対面の機会が減った分、電子メールの送受信が増えた人も多いのではないでしょうか。LINEなどのチャット型ツールが普及した今、メールは“LINEより少しあらたまった通信手段”という新しいポジションを獲得しています。そこでマナーコンサルタントの西出ひろ子さんに、大人が身につけておきたいメールのマナーをうかがいました。 【写真】メールを打っている女性のイメージ。ニット姿でパソコンを操作する女性の横からの姿 依頼形やクッション言葉を積極的に活用を マナーとは、相手を思いやって(=礼)それを形に表すこと(=儀)だと説くマナーコンサルタントの西出さん。メールを送るときに最も大切なのは、やはり相手を思いやる心だといいます。 「読んだ人が嫌な気持ちにならないように、ひと手間加えることが大切です。例えば相手にしてほしいことがあるときは『~してください』ではなく、『~していただけますか』と依頼形を使ってソフトに書くといいですね。『お手数ですが』『さしつかえなければ』といったクッション言葉も、積極的に活用しましょう。 いきなり用件に入らないで、まずはあいさつ文を入れるのも、大人のたしなみ。終わりには相手の健康を願う内容など、直接、用件に関係ない話題を盛り込んだりして、ちょっとした余白を足してみると、親しみを感じてもらえるのではないでしょうか」 ◆メールはコミュニケーションを取る意識で活用すべし メールは、世の中に登場したばかりの頃と違って、今ではSNSなどに比べて“正式”感のあるツールという位置づけになっています。必要最低限の連絡に使うというより、コミュニケーションを取る意識で活用すると、人間関係にもプラスに働きそうです。 「返信が不可欠なときに限らず、日頃から受け取ったメールにこまめに返信すると、出来た人だなという印象になります。例えば、オンライン会議のURLがホストから届いたときなどに、簡単でいいので返信しておくとホストのかたも安心です。 その際は『Zoom会議のセッティングありがとうございます』などお礼を添えるといいですね。その人が担当することになっている作業であっても、当たり前に思わずに感謝の気持ちを伝えることで、あなたへの評価がグッと上がります」 あいさつ文のひと手間を欠かさずに あいさつ文は、どのようなものが適切なのでしょうか。「ごくろうさま」は失礼に当たる、「お疲れさまです」と言われるのを嫌う人もいる、という話も聞きます。 「相手と良好な関係を築きたいから書くあいさつ文なので、相手の感覚を想像することは大切ですが、あまり考えすぎる必要はないと思います。『お疲れさまです』は、“そういえばこの人が言ったり書いたりしているのを見かけない気がする”と思えば避けるほうが無難でしょうね。 でも、悪気があって使っているわけではないですし、この言葉遣いが非常識というわけでもないので、いちいちとがめだてするほうがマナー違反ではないかと思います。少なくとも、自分がメールを受け取ったときは、文法上の正しさや国語学的なこだわりで相手をジャッジするのはやめて、相手がわざわざ書いてくれたことにまず感謝したいですね」 ◆「ごくろうさま」はOK? 一方、「ごくろうさま」は現時点では使わないほうが堅実といえるかもしれません。 「この言葉は諸説あって、特にここ数年では、目上の人に使っても問題ないとする説も見聞きします。ただ、目上の人には使わないという説が既に広く知られていますので、そのことも踏まえ、相手がどう受け取るか考え合わせて判断したいですね」 使う人が増えている宛名の「さん」はアリ? メール本文の1行目に持ってくる宛名の書き方も、人によって感覚や持論が異なります。近年は社外の人宛てのビジネスメールでも「○○さん」と書き出す人がいます。 「この10年、20年ほど、社会全体のトレンドとして、よりフランクでフラットなムード、やりとりが好まれる傾向にあるので、インフルエンサーの方などが『後輩や部下や親しい人には、宛名もさん付けでOK』と言えば、それが広まりやすいのだと思います。 ただ、やはりTPPPO〈time(時)、place(場所)、position(立場)、person(人)、occasion(場合)〉は意識すべきです。インフルエンサーのかたは多くが芸能界やIT業界で活躍されていたり、組織に属するのではなく自ら経営する立場のかたが多いですよね。そのかたのすることを他業界の企業にお勤めのかたが安易にまねるのは『ちょっと待って』をおすすめします。受け取る人の感覚には合わないこともありえるからです。 私はお仕事でさまざまな会社にうかがいますが、メールをきちんと書くことを推奨している企業は多いです。親しき仲にも礼儀あり。現時点では、宛名として書く1行目は『様』を使い、2行目以降は『○○さんはどう思われますか』など、さん付けにするのが適当だと思います」 使えると好印象な「えいさま」「つぎさま」 さらに、宛名の「さま」は漢字の使い分けを覚えておくと、年配のかたなどから好印象を持ってもらえる可能性があります。 「『さま』の漢字は使い分けができます。最上級の敬意を表したいときは『樣』。読み仮名は同じ『さま』ですが、つくりの部分が羊に永と書くので、この漢字のことを『えいさま』と呼んだりします。続いて、えいさまの次点クラスの敬意を表す『さま』もあります。これは、つくりの部分が羊に次で、この漢字の呼び名は『つぎさま』です。最後は一般的な『様』。これは『みずさま』と呼びます」 普段からそこまで細かく使い分けていられない、という人がほとんどだと思いますが、知っておくと使えるタイミングが来るかもしれません。 「わたしは何も『これを知らないなんて非常識』『ここまでしないとマナー違反』と言いたいのではなく、楽しんで知識を増やしていきませんかと、例を挙げてご提案したいのです。この人生百年時代、わたしたち世代だって日々勉強ですからね。 『こうしないと失礼に当たる』などという減点法や強迫観念でマナーを考えるのではなく、身につけると人との関係にプラスがあるかもしれないと思って、楽しく前向きにマナーを考え、楽しく使いこなしていきましょう。心映えひとつで、わたしたちの日々はさらに輝きます」 ◆教えてくれたのは:マナーコンサルタント・西出ひろ子さん ビジネススタイリスト・マナーコンサルタント・美道家。HIROKO MANNER Group代表、ウイズ株式会社代表取締役会長。一般社団法人 マナー教育推進協会 代表理事ほか。大妻女子大学文学部国文学科(現・日本文学科)卒業後 国会議員などの秘書を務めたのち独立。あらゆるマナーに精通するマナーコンサルタントとして、名だたる企業300社以上のマナーコンサルティングやマナー研修を行う。NHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』、映画『るろうに剣心 伝説の最後編』などのマナー指導やマナー監修も務める。テレビ番組におけるマナー指導などメディア出演は800本を超える。著書は、最新刊「マナー講師の正体 マナーの本質」ほか、2003年12月以来、海外を含め95冊以上を出版している。 取材・文/赤坂麻実
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更新:20211103 18:49:13
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