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東芝を早期退職してアイリスに入社したテレビ事業部長の武藤和浩

2019年12月08日

快進撃続けるアイリスオーヤマの「おじさん技術者」たち

 アイリスオーヤマは11月13日に音声操作ができる4Kテレビ「LUCA(ルカ)」の発売を発表した。同社初の音声操作可能なテレビを開発するために陣頭指揮を執ったのは、東芝を早期退職して、2016年からアイリスに入社したテレビ事業部長の武藤和浩さん(59歳)だ。

【画像】4Kテレビの価格とラインアップを見る

 東芝時代には異なる国出身の技術者が多かったフランスの家電メーカー「トムソン(現在は中国のTCL集団)」と一緒に製品を開発したほか、中国、シンガポールなど海外を2カ国も駐在してきた。考え方の異なる外国人技術者とやりあいながら、その国に適した商品開発をしてきた。「出身が異なる人と意見をぶつけ合いながら製品を開発するのは、私の性格に合っている。だから、東芝から会社のカルチャーが異なるアイリスオーヤマに来ても、仕事をする上で特に違和感はなかった」と笑う。

 豊富なキャリアを生かして、アイリスという自由が利く新天地で、もう一花咲かせようとしている。武藤さんのキャリア観と今後の目標を聞いた。果たしてアイリスオーヤマはテレビ事業でも旋風を起こすことができるのだろうか。


30~50代技術者による「混成部隊」

 大阪の小さなプラスチック成形工場からスタートしたアイリスは、2009年に家電に本格参入し、13年には大阪R&Dセンターを開設。業績悪化で退職せざるを得なくなったシャープなどの大手家電メーカーから多数の社員を中途採用した。現在は同センターにいる100人以上のうち約80人が中途採用だ。18年には黒物家電に参入し、東京にもR&Dセンターを開設した。今回発売したテレビはここで開発された製品だ。

 その後はグループ全体の売り上げも大幅に伸びて、18年には4750億円まで拡大。22年度にはグループの売り上げを1兆円規模まで伸ばすことを目標に掲げている。その目標達成の核となるのがテレビ事業だ。





 アイリスは中途採用した人材を活用して家電事業を拡大してきた。最初は炊飯器や掃除機、空気清浄機などいわゆる白物を発売したことに加え、18年にはテレビなど黒物家電に後発ながら新規参入、そのために必要となる関連分野の技術者を他社から中途採用してきた。その中には経営難に陥った家電メーカーの元社員もいる。

 このため、家電事業部の社員は出身企業が異なる「混成部隊」だ。シャープや東芝出身の40~50代以上もおり、中には30代で前の会社に見切りをつけてアイリスに移ってきた技術者もいるという。


社長や役員が居並ぶ「プレゼン会議」

 武藤部長に前職との意思決定方法の違いを聞くと「少人数で若手に任せる形でやっているので、提案があってから製品になるまでがスピーディーだ」という。意見が食い違った場合の対応については「これまで(東芝で)外資企業や協力会社と製品開発のたびに意見をぶつけ合い、コミュニケーションを取ってきたので慣れている」と話し、「混成部隊」をまとめていく上でもマネジメントができる自信を示した。

 アイリスでは新製品を出す前に、社長や役員などが居並ぶ「プレゼン会議」と称される毎週月曜日開催の新商品開発会議でプレゼンテーションをしなければならない。この場でOKが出なければ製品化はされないのが、この会社のしきたりだ。求められるのは、生活者目線に基づく、機能、デザイン、価格などあらゆる側面からの徹底的な検討であり、厳しいやりとりがされる。このプレゼン会議は同社の大山健太郎会長が社長だった草創期から行われている取り組みで、同社製品のアイデア創出の原点にもなっている。

 今回の音声操作付きテレビのアイデアはプレゼン会議で無事に承認された。特に家電後発のアイリスが重視しているのが、既存製品とは異なる「なるほど」機能だ。

 武藤部長が30年以上も勤務した前職では当時、新製品開発のアイデアが提案されても、製品化のゴーサインが出るまでにはいくつかの部門で承認を得る「稟議(りんぎ)」という日本企業独特の手続きが必要になっていた。ある大手企業の技術者は「稟議に時間がかかってしまうだけでなく、技術者のとがったアイデアも上の承認を経るうちに角が取れてしまう」と嘆く。

 一方アイリスの場合はそうした時間を要する稟議はないようで、プレゼン会議での決定が、最も重視されるようだ。このため、製品化までの期間が短く、中途入社の開発担当者にとってもモチベーション向上につながるというわけだ。



買い替え需要で国内テレビに追い風

 4Kテレビについては18年の11月にテスト販売をした。しかも、過去に販売したことのないホームセンターで売ってみたところ、予想以上の反応があったという。石垣達也家電事業部統括事業部長は記者会見で「正直なところ売れるかどうか不安だったが、幅広い年代層の来店があり、このテレビが受け入れられたと思った」と語った。その後1年間で約10万台のテレビを出荷し、音声機能付きテレビの発売に踏み切ったという。

 現在日本のテレビ市場は、年間約450万台の市場規模だ。18年からは4K対応BS放送が始まり、19年から20年にかけてはラグビーワールドカップ、東京オリンピックなど大きなスポーツイベントがめじろ押しだ。さらに家電業界が最も期待しているのは、今年から来年にかけて見込まれる「買い替え需要」である。09年から10年に年間2000万台以上と爆発的に売れたテレビの買い替え時期を迎えるのだ。これらの要素が追い風となって、今年は500万台以上売れるのではないと皮算用をしている。しかも高価格な大画面の高品質テレビが売れれば、売り上げだけでなく利益増にも貢献するのだ。

 18年のテレビのシェアは1位がシャープ、2位がパナソニック、以下は東芝、ソニーなどであり、アイリスはまだ圏外だ。石垣統括部長は音声機能付きテレビの販売目標について「初年度で5万台の出荷を目指す。中長期的な目標としては、数量ベースで10%のシェアを取りたい」と獲得に強い意欲を表明した。10%ということは、単純計算すると年間50万台を売らなければ達成できない。

ブランド力に課題 新参者を率いる

 国内のテレビメーカーをみると、海外市場で韓国、中国メーカーなどに勝てなくなり、どのメーカーも数年前から生産縮小に追い込まれている。東芝は本体の業績悪化から18年2月にテレビ事業を中国のハイセンスに譲渡、「レグザ」というブランド名は残っているものの、厳しい状況だ。

 続いて日立製作所が同年10月で国内の自社ブランドのテレビ販売を終了すると発表、日立のテレビが消えた。16年に台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入ったシャープは、テレビの生産をホンハイに委託、生産台数を大幅に増やしてきていて、意外な感じがするものの、現在の日本市場では首位に立っている。生産コストを絞ったことで、シャープブランドがよみがえりつつある。

 この厳しいテレビ市場で、ブランド力のない新参者のアイリスが果たしてシェア10%を獲得できるのかどうか。新製品の音声機能対応テレビは65インチなど大型画面の商品をそろえており、武藤部長は「このテレビの最大のアピールポイントは大画面の高画質と音量だ。テレビの市場は良いときもあれば、厳しいときもある。重要なのは、安定的に売ることだ。大幅に落ち込むことなく売ることができれば、次第にブランドも獲得できる。そうすればシェアも取ることができる。だから発売後のこれからが正念場だ」と決意を語る。

 既存のテレビメーカーにはない「なるほど」機能が顧客に評価されて、ブランド力が付くまでには、一定の時間がかかる。そこまで競争の激しいテレビ業界で生き残っていけるかどうかが課題になる。武藤部長率いるテレビ事業と、「アイリスオーヤマ混成部隊」の真価があらためて問われそうだ。(中西享、今野大一)




引用元の記事はこちら(https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191207-00000018-zdn_mkt-bus_all)


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