2019年12月10日
ミズノが狙う「作業服」市場 少子化、制服廃止で新陳代謝
職場で着る制服や作業着といったユニホームウエア業界で、さまざまな変化が起きている。屋外作業で着るワークユニホームの市場は2010年東京五輪・パラリンピック開催などに伴う建設需要の高まりで伸長。さらにカジュアルなデザインにした作業着は、機能性と手頃な価格が受けて普段着としても浸透してきた。一方で、制服を廃止する企業が増えた影響で、オフィス向けのユニホームは低調だ。(山本考志)
【写真でみる】機能とファッション性を併せ持つワークユニホーム
■復興、五輪…「作業服」底堅く
9月12日に大阪市内で開催された作業服・用品専門チェーン主催のユニホーム展示会「たまゆらフェスタ」。各企業が機能やファッション性の高い製品を出展し、作業服を着たモデルが登場するファッションショーまで開かれた。10月には、工事現場などで使う安全衛生用品を一堂に集めた国内最大規模の展示会「緑十字展」が京都市内で開催。「ガテン系」といわれる現業職場向けの市場は活況だ。
どちらの展示会にも出展していたのは、スポーツ用品大手「ミズノ」だ。
同社は4月にワークユニホームなどを専門とする「ワークビジネス事業部」を発足。昨年度の関連製品の売り上げは39億円と連結売上高全体の2%程度だが、令和3年度までに100億円規模まで伸ばす計画で、同部の中島雅利部長は「新たな幹となる事業に成長させたい」と意気込む。
展示会では、独自の型設計で空気の流れを制御するファン付き作業服や発熱する繊維を使ったアウター、動きやすさを高めた防刃グローブなどの製品を多数展示。同社がスポーツ用品で培った技術を取り入れている。
ミズノは近年、ホームセンターや専門店で並ぶ個人をターゲットにした作業服を発売し、少数からでも製品に企業名などを入れることができるオーダーサービスを行っている。
つま先を保護する「プロテクティブスニーカー」では、スポーツシューズを主力とするアシックスが先行。プーマやディアドラといったスポーツブランドと競り合っている。
矢野経済研究所の調査によると、国内のユニホーム市場は平成23年3月に発生した東日本大震災から復興で作業服などの需要が高まり、23年度の4757億円から年々増加。東京五輪に向けた建設・インフラ整備も追い風となり、30年度は5254億円まで拡大した。
■子育て中の女性にも浸透
好調なワークユニホームは労働現場以外のシーンにも拡大している。
ファン付き作業服や保温性の高いアウターなどはアウトドアやスポーツ観戦などで活躍。撥水加工された作業着やシューズは汚れにくさなどから、子育て中の女性らに支持されている。
ヒットの牽引役となった作業服店専門チェーン最大手の「ワークマン」は、昨年9月に個人客向けにカジュアル化したプライベートブランドもそろえた新業態店「ワークマンプラス」を展開し、11月中には全国で140店以上に広げる。
投資支援サービスを提供する「フィスコ」のアナリスト、馬渕磨理子氏は「ワークマンはもともと機能性が高く安価な製品を扱っていたが、顧客の意見を取り入れてカジュアル化した製品を開発しSNSなどで発信してもらうことで、多くの人に製品の魅力が伝わりヒットした」と指摘。「ワークユニホームの人気は、ユニクロなどのように、ブランドよりも実用性を重視して服を選ぶ人が増えている証だ」という。
■少子化、制服廃止で新陳代謝
一方で、学生服などのスクールユニホームの需要は少子化で減少傾向にある。
野球などのスポーツ用品も将来的な市場縮小が避けられず、新たな収益の柱とするため、各社はワークユニホームに力を入れる。
また企業や官公庁では、職場内でのカジュアル化や経費削減を受けて制服の廃止が相次ぐ中、狭い市場でのシェア競争が激化している。今年8月には、企業や官公庁向けのユニホームで業績を上げていた昭和41年設立の「サンリット産業」(大阪市)が事業を停止し、自己破産の手続きに入るなど淘汰の動きさえ出てきた。
幅広い消費者に受け入れられる多品種の製品づくりが、生き残りのカギになっているようだ。
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