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ネットが生み出す才能とメガヒット

2021年06月18日

ネットが生み出す令和の流行歌

YOASOBI、あいみょん――ネットが生み出す才能とメガヒット


「歌は世につれ、世は歌につれ」と言われるが、Jポップをめぐる現状を、音楽ジャーナリストの柴氏は「CD未リリースの楽曲が流行歌として一世を風靡するようになってきている」と考察する。その背景には何があるのだろうか。(『中央公論』2021年7月号より抜粋)


紅白がテレビでの初歌唱

 知らない歌が、いつの間にか流行っている。曲名もアーティスト名も聞いたことがなかったのに、どこかで聴いたフレーズが何故か耳から離れなくなってしまう。最近になって、そういう体験をした人は多いのではないだろうか。

 コロナ禍で大きな逆風の最中にある音楽業界。しかし、実はここ最近になって、世代交代の波が訪れ、新たなヒット曲が続々と生まれている。アイドルグループが握手会などの特典商法でファンに複数枚のCDを売ることが通例になり、ミリオンセラーが続出しても「何がヒットしているのかわからない」と言われていたのが数年前のことだ。しかし、今はCD未リリースの楽曲が流行歌として一世を風靡するようになってきている。

 たとえばその代表が、昨年の「NHK紅白歌合戦」に出場したシンガーソングライター・瑛人の「香水」だ。「君のドルチェ&ガッバーナの その香水のせいだよ」という印象的なフレーズを持つこの曲は、二〇二〇年の春から夏にかけて本人や家族も驚くような現象を巻き起こした。曲を発表した当時、彼はレコード会社にも芸能事務所にも所属していない。地元・横浜のハンバーガーショップでアルバイトをしながら数十人の前で歌っていた彼は、いつの間にか全国区の存在になっていた。

 同じく昨年の紅白に出演したYOASOBIも、ポピュラー音楽の新しい時代を象徴するグループと言っていいだろう。「小説を音楽にする」というコンセプトで生まれた、Ayaseとikuraの男女二人組。一九年末に発表したデビュー曲「夜に駆ける」は、紅白がテレビでの初歌唱。YouTubeに公開されたミュージックビデオが徐々に話題を呼び、二〇年のナンバーワンヒットとなった。

 こうした状況はいかにして生まれたのか。ポピュラー音楽の世界に何が起こっているのか。“令和の流行歌“がどのようにして生まれているのか、解説したい。

 ポイントは三つある。一つは、CDでも、ダウンロード配信でもなく、聴き放題のサブスクリプション(定額制)の音楽ストリーミングサービスが普及してきたこと。変化の起点になったのは一五年だ。この年にAppleMusicやLINEMUSICなどIT企業大手がサービスを開始。翌一六年には世界最大級のストリーミングサービスであるSpotifyが日本上陸を果たし、状況が整備された。当初は国内の人気アーティストの楽曲は提供されておらず洋楽が中心だったが、一七年に宇多田ヒカルやDREAMSCOMETRUE、一八年にMr.Childrenや松任谷由実、一九年にサザンオールスターズや嵐など、数々の大物アーティストがストリーミングに楽曲を解禁。日本レコード協会が発表するストリーミングの売上額も一五年の一二四億円から二〇年は五八九億円へと拡大した。

 二つ目のポイントは、こうした状況の変化を受けて、CD時代に代わるストリーミング時代の新たな「ヒットの基準」が生まれてきた、ということだ。かつては「ミリオンヒット」という言葉が象徴するように、一〇〇万枚というCD売上の数字がヒット曲の一つの目安となっていた。しかし今は、一億回というストリーミング総再生回数の数字がその目安となっている。こうしたサブスク型のストリーミングサービスでは、ユーザーは月額一〇〇〇円程度の料金を支払い、それが楽曲の再生回数に応じてアーティスト側に分配される。すなわち、ストリーミングサービスでの再生回数の多さはアーティストの収益にも直結するわけである。

 ヒット曲の広まり方も変わった。ストリーミングサービスでは、一人が同じ曲を何度も聴くことが一般的だ。「売れた枚数」を基準にしたヒット曲が発売日にピークを迎えてその後は徐々に下がっていくのに対し、「聴かれた回数」を基準にしたヒット曲は、リリース日から数ヵ月をかけて徐々に広まるロングヒットの形をとることが多い。


売れること流行ること

 そして三つ目のポイントは、こうした音楽消費の変化を踏まえた新しいヒットチャートが定着したことだ。

 ミリオンヒットが続出した一九九〇年代から二〇〇〇年代にかけては、ヒットチャートとは、すなわちオリコンのランキングのことだった。オリコンが発表するシングルCDの売上枚数ランキングが、ヒット曲の指標として機能してきた。

 しかし一〇年代に入り「CDが沢山売れること」と「曲が流行っていること」は、必ずしもイコールではなくなった。オリコンの年間シングルランキングでは、二〇一一年から一九年にかけて、全ての年においてTOP3をAKB48や関連のアイドルグループが独占している。よく知られているように、この結果は、一部のファンが同じCDを複数枚購入することによって実現したものだ。AKB48関連のグループのCDには、メンバーとの握手会に参加できる握手券や、一八年まで開催されていた「シングル選抜総選挙」の投票券が封入されていた。それを求めてファンが複数枚のCDを購入し、セールスを押し上げた。コアなファンは一人で何枚、何十枚、時には何百枚ものCDを買うようになった。

 こうしてオリコンのシングルランキングの上位をAKB48や関連グループが覆い尽くす一方で、本当の流行歌がヒットチャートから見えなくなっていた。たとえば一四年には松たか子とMayJ.が歌った映画『アナと雪の女王』の主題歌「レット・イット・ゴー~ありのままで~」が、一六年にはRADWIMPSによる映画『君の名は。』の主題歌「前前前世」がヒットしている。しかし、これらの曲はどちらもシングルCDとしてはリリースされておらず、オリコンのシングルランキングには登場していない。

 そんな中、オリコンに代わる新たなヒットチャートとして知名度を上げたのが「ビルボード・ジャパンHot100」だ。こちらはCDの売上だけではなく様々な指標を合算した複合型ソングチャート。アメリカで最も権威あるヒットチャートと言われる「ビルボードHot100」の日本版である。

 ビルボード・ジャパンHot100は〇八年にスタートしている。当初はCDのセールス枚数とラジオのオンエア回数を合算することから始まり、一五年にYouTubeのミュージックビデオ再生回数、一六年にはストリーミングサービスの再生回数、一八年にはカラオケでの歌唱回数が独自の指標でポイント化されチャートに組み込まれるようになった。結果、一八年頃からは、オリコンランキングよりもこちらのほうが音楽の流行の指標を反映しているという認識が広まり、新聞やテレビ番組でもヒットチャートとして採用されることが増えていった。

 また、オリコンも一八年十二月にはCDとデジタルダウンロードとストリーミングそれぞれの週間ランキング、そして三要素を合算した「オリコン週間合算ランキング」の発表を開始している。


あいみょんの「マリーゴールド」

 こうしたヒットチャートの整備によって「ランキングを見ても何がヒットしているのかわからない」と思われていた一〇年代前半から半ばまでの状況は徐々に後景化した。流行歌が世に戻ってきたのである。

 こうした変化を象徴するターニングポイントの一曲となったのが、二〇一八年八月にリリースされたあいみょんの「マリーゴールド」だ。この曲は決してCDが売れたわけではない。オリコン週間シングルランキングの最高位は二五位だ。しかしAppleMusicやSpotifyの再生回数ランキングで一位となり、それが牽引する形でビルボード・ジャパンHot100でも五位(八月十五日付)にランクイン。そこから楽曲はロングヒットを続け、あいみょんは一八年の紅白に初出場を果たす。人気はそこからさらに広まり、一九年六月にはストリーミング累計再生回数が一億回を突破。国内アーティストとしては初の達成となった。

 兵庫県出身で、両親の聴いていた吉田拓郎や浜田省吾、尾崎豊、小沢健二などに影響を受けて音楽を志すようになったあいみょん。一九九五年生まれでありながら、彼女の歌う楽曲には七〇年代のフォークやニューミュージックを彷彿とさせるような懐かしい響きと普遍的なポップセンスが息づいていた。「マリーゴールド」の人気も、郷愁を誘うメロディと、「麦わらの帽子の君が 揺れたマリーゴールドに似てる」と淡い恋模様を夏の風景に重ねた歌詞の描写が決め手になった。こうして「ストリーミングサービスが生んだ最初のスター」となったあいみょんだが、その魅力は歌謡曲やJ─POPの時代から綿々と受け継がれているピュアな歌の良さにあったと言える。


(『中央公論』2021年7月号より抜粋)




引用元の記事はこちら(https://news.yahoo.co.jp/articles/5a3c298a52bd80e1dd8c123ce59b413482aa0ea0)


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