2023年04月07日
熊本に出現した白い飛行物体、正体は妖怪「一反木綿」か?
辛酸なめ子じわじわ時事ワード【一反木綿】
このところ、偵察気球など不穏な未確認飛行物体のニュースが世間を騒がせていましたが、熊本県に現れたのは、どこかほのぼのとしている白い飛行物体でした。
雲一つない青い空。飛行機雲以上のリアルな存在感で空に浮かんでいたのは白い細長いひものような物体です。先月下旬、熊本県益城町で目撃者によって動画が撮影されました。
動画では「龍みたい」と言われていますが、白い帯状なので、龍というよりは一反木綿似。糸がついていないので、凧でもなさそうです。「まわりもみんな、あれ『生きてる生きてる』って」という言葉が、妖怪へのロマンをかき立てます。山の方へ消えていったというのも神秘的。動画を見ると何らかの意志を持って進んでいるような動きでした。久しぶりに空を回遊していたのでしょうか。
12年前の2011年3月にも、すぐ近くの合志市で今回とそっくりな“一反木綿”が撮影されていました。やはりこの近くをテリトリーとする一反木綿なのでしょうか。
「アラマタヒロシの日本全国妖怪マップ」という本によると、「一反木綿」は鹿児島県肝付町の妖怪とされていて、場所も九州という共通点が。
「空を飛び、人に巻きついて窒息させたり、空に持ち上げたりして襲うこともある」「一番後ろを歩く子どもを狙う」という恐ろしい言い伝えが。やはり偵察気球より危険かもしれません。でも、最近は何でも映像に残ってしまうので、一反木綿も警戒し、みだりに人を襲わなくなっているのかもしれません。
一方で、「風で巻き上げられた農業用ビニール(農ビ)」説も浮上。農ビはビニールハウスなどに利用される素材。「一反木綿」は白い農ビの切れ端という夢のない結果になってしまうのでしょうか。そうなると、むしろ電線や線路に巻きついたら危険で、なんとか捕獲した方が良さそうです。
それでもまだ可能性はゼロではありません。妖怪の本には、一反木綿は「 付喪神つくもがみ 」という説も書かれていました。長い年月を経た道具に精霊が宿ったものを指します。つまり、古い農業用ビニールに何かが宿った妖怪という可能性も……。日本古来の妖怪の存在は、大切に語り継いでいきたいです。
神様のトイレットペーパー
イラスト・辛酸なめ子
アメリカのモンタナ州でも、空に浮かぶ不思議なひも状の物体が目撃されました。
投稿サイト「reddit」に動画がアップされると、「粘着性ハエトリ」「神が捨てたトイレットペーパー」など、ユーザーが大喜利大会のように推測。どうやら飛行機雲説が濃厚です。日本の不思議な飛行物体は妖怪だと信じたいですが、他国の写真は冷静に見てしまいます。妖怪に見えるも見えないも、人の心次第です……。
(漫画家・コラムニスト、エッセイスト)
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