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卒業アルバムも合成や加工が当たり前に?

2023年03月26日

いまどきの卒業アルバム 合成、差し替え、加工まで何でもありの

 卒業アルバムに載る写真は、SNSで見かけるように映えていたり、キラキラしたりはしていないかもしれないが、現実の記録として「ありのまま」を受け入れるのが普通だった。ところが最近では、現実を受け入れず変更を要求する生徒と保護者が増えているという。ライターの森鷹久氏が、卒業アルバム編集をめぐる混乱についてレポートする。

【写真】撮影数を増やして備える

 * * *
「デジタルになって、誰もがきれいで上手な写真を撮るようになってから、いろいろ変わりましたね。最近だと、女の子だけでなく男の子でも、自撮りの”加工”までする。写真うつりなど、昔の子なら気にしないような細かい所までチェックする。今の子達は本当に敏感ですよね」

 千葉県内で写真館を経営する杉本義彦さん(仮名・50代)は、十年以上、地域の小中学校の卒業アルバム制作に携わっている。入学式から部活の大会、修学旅行にも泊まりがけで同行し撮影するが、それを数校掛け持つため、その負担は相当なものである。しかしほぼ一年間、大小様々なイベントで行動を共にすることで、生徒たちからも「杉本のおじちゃん」と慕われ、アルバムの納品時には目頭が熱くなることもある、かなりやりがいのある仕事だと話す。だがこの数年は、アルバム制作を巡って今までに無かったような「トラブル」が続発しているという。

「クラスの集合写真を撮る際、お休みしている生徒さんがいると、昔は後日別撮りして、集合写真の中に丸枠で入れていました。そういう子には不登校児も多く、複数の親御さんからも”遺影みたいで気の毒だ”というクレームが出て、今では“合成”が当たり前になっています。集合写真の撮影の際も、先生がお休みの生徒を合成するスペースを取るよう生徒に指示を出すんですよ」(杉本さん)

 実際に杉本さんが合成したという写真を筆者も確認したが、集合写真の中に、周囲とは光の当たり方や色味の異なる生徒の写真が確かに合成されていた。一見するとわかりにくいが、撮影するシチュエーションも違えば、微妙な角度も違い、やはり合成であることはわかってしまう。当然に労力だって、以前に比べれば大きくなったものの、それでも「親御さん達の希望」であれば、杉本さんとしては従うしかない。卒アルにどんな写真が載るのか、かつて以上に生徒たちが気にしていることも肌で感じているからだ。

「集合写真でも個人写真でも、撮影後に”見せて”と生徒がやってくる。昔なら、いい顔とか変な顔とか笑い合って終わりましたし、もっと昔のフィルム時代なら“見せて”もなかったわけですよ。最近だと撮り直して欲しいと泣き出す子までいて、毎回、本当に苦労しています。以前なら、目をつぶった写真が数枚紛れ込むことは普通でしたが、今はそれすら許されない。フィルムと違って、デジタルで何百枚も撮れるようになったので、とにかく枚数を撮ってカバーしています。いくら子供さんでもお客さんですから、できるだけ要望には応じます。成人式など、後から写真館を利用してくれる可能性だってありますし」(杉本さん)


生徒ごとの掲載数と種類のチェック表を作成

 カメラマンがこれだけ苦労しているのだから、教員も「卒業アルバム」制作に当たっては、以前にも増して振り回され続けている。都内の私立小学校教諭・橋本成美さん(仮名・40代)が、その苦労を訴える。

「自分の子供の写りが良くない、登場回数が少ない等といったクレームは昔から一部の親から上がっていました。最近は、その数が増えてきたように思いますし、親だけでなく子供たち自身もより気にしているように思います。アルバムってお金を出して購入する商品で、一生残るわけですから、そうした声を無視するわけにもいかないんです」(橋本さん)

 アルバムの制作は、学年主任や担任などで構成する「アルバム委員会メンバー」が中心となって行われることが多い。メンバーは写っている写真が何回、登場しているか、その大きさ、シチュエーションなどを生徒別にまとめ、偏りが出ないよう調整まで行うのだというが、それは以前赴任したどの学校でも同様だったという。

「ある試合の写真を掲載したところ、その試合で活躍したのは別の生徒なのだから、そちらの写真を載せるべきだ、というクレームが親から届いたこともありました。そのときは、カメラマンに”この生徒の写真を撮っていないか”と確認して、写真を差し替えました。すると今度は、差し替えられて掲載されなくなったほうの生徒の親からクレームが来る。なので、客観的に見てもバランスが取れていることを示すためにデータにまとめるんです。委員会のメンバーだけでなく、教員全員で数日かけてこの作業をやりますから、大変な手間です」(橋本さん)

 事前に「親に確認」していること自体、違和感を覚えるのは筆者だけではないだろう。だが”現場運営”をスムーズにするため、クレームの発生しそうな親には、担任が個人的に連絡し念押しすることも珍しくないのだとも明かす。

 そしてこの手のクレームが年を追うごとに多様化していると説明するのは、大阪市内の公立小学校教頭・長谷川仁美さん(仮名・50代)だ。

「そもそも卒業アルバムにうちの子を出すな、という親もいます。実際、ある卒業生がアルバムのクラス集合写真をSNSに載せて、無断で写真を使われたとトラブルになったことがあります。アルバムへの掲載差し止めを要求してくるのはほとんどの場合親で、基本的には親を説得する場合が多いのですが、家庭での影響からなのか生徒まで拒否する例もあり、かろうじて名前の文字のみ載せたということもありました。最近だと、カメラマンの写真は写りが悪いからと、自分で撮影した顔写真を持ってくる生徒までいる始末。価値観の違いと言えばそうですが、将来、アルバムを見たときに悔やんでも取り返しがつかないのにと思います」(長谷川さん)

 生徒や親という「顧客」に対するサービスであるため、一般的にはこうだとか、普通はこうするといった現実的なアドバイスもするが、基本的には客の要望を受け入れるしかなく、これはカメラマンにも教員にとっても、同様のようだ。これを「客のニーズ」といってしまえばそれまでだが、ニーズに応えすぎたがあまり、とんでもない卒業アルバムが仕上がってしまった例もあると続ける。


「最近は、地元の写真館でなく、ネット経由でカメラマンさんを手配する学校もあり、知人が働く私立高校がそうでした。そういったカメラマンさんは、確かに写真は綺麗で上手なんですが、生徒や親に喜ばれるよう、写真に過度な修正をかけたりする。まさに、生徒たちが喜ぶ加工を頼まれずともやってくるんです。ごく一部の親子からは好評でしたが、大多数が失敗した、と感じたそうです。いろんな形のアルバムがあってもいいとは思いますが、後から見返したときに恥ずかしくないものである必要はあると思います」(長谷川さん)  修正されすぎた写真が並んだその卒業アルバムは、学生生活の記録や記念というよりも、架空のキラキラした女子学生のInstagram投稿を並べたようなものになっていたのだ。ただし、それは集合写真のみで、個人写真は“実物”だった。チグハグだし、子供たちも「顔が違いすぎる」と笑い合っていたが、その様子を見ていた長谷川さんの心情は理解できる。それでは、平凡だけど楽しかった学生生活を振り返るアルバムとは言えないだろう。  時代と共に変化していくものは、モノだろうが考え方などの思考だろうが多数ある。しかし、実在するモノやコトを、実在したモノやコトとは違った形で残そうとする行為は本当に正しいのだろうか。写真が存在しなかった時代の絵画などとは比較できないが、自分の現在や過去を自身で極端に脚色したり、演出することが普通になってしまうのではないか。そして来歴を詐称するのが当たり前だと考えてしまう風潮が蔓延してしまうのではないか、という不安は残る。  スマホと通信環境が発達して誰でも手元のスマホで多くの情報に接するのが当たり前となったいま、真実よりも画面越しの見た目の美しさ、面白さばかりが重視されがちだ。それが行き過ぎて、真相とは違うのに「いい話だから」「心地よいから」とフェイクニュースであっても受け入れるような風潮はすでに存在している。さらにその風潮は、やはり拡大していると言わざるを得ない。  現実より、一部の人にとってだけ都合が良い偽物の記録ばかりが残されるのは、決して歓迎されるべき兆候では無い。しかし、卒業アルバム制作の現場では、これが当たり前になってきてしまっている現実がある。



引用元の記事はこちら(https://news.yahoo.co.jp/articles/e4c3fbef059c89dacc9e9eb7fb00884427ea29cd)


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