2023年06月03日
セルフレジ導入で「仕事が増えた」店員の悲鳴
セルフレジ導入で「仕事が増えた」店員の悲鳴 「苛立つ客の操作補助がストレス」「万引きの判断が難しすぎる」
5/31(水) 16:15配信
マネーポストWEB
セルフレジ導入で店員の仕事が増えた?(写真:イメージマート)
人手不足の解消や業務の省力化などを狙って、スーパーやコンビニで相次いで導入されるようになった「セルフレジ」。商品のバーコード読み取りから会計操作までを客自身が行なうため、慣れない中高年層を中心に戸惑いの声は多い。ただ、戸惑っているのは来店客ばかりではない。街中のスーパーや飲食店では、セルフレジでの精算を巡るトラブルに店員側も苦慮しているという現実がある。
精算を巡るトラブルは、有人レジ時代に比べて圧倒的に増えたという
東京・大田区の中規模スーパーの40代女性パート店員が打ち明ける。
「現在、当店では9割がセルフレジになっています。ここ2年で急速に導入が進み、私たち『チェッカー(レジ打ち)』のパートの大半が“配置換え”されました。商品の品出しや陳列、食品加工など、いわゆるバックヤード業務に回され、毎月の賃金が下がった人も少なくありません。私はチェッカーとして残りましたが、日々の大半の業務はセルフレジの操作補助。これが、相当ストレスが溜まる仕事で……」
コロナの感染拡大防止(非接触・非対面)を契機に加速した「セルフレジ」の導入。今では当たり前の光景となったが、セルフレジでの精算に苦戦する客は少なくない。不慣れな機械の操作にまごつき、苛立ちを店員に向ける客もいる。
「当店では、商品バーコードの読み取りから精算まで、すべてお客様が行なう“フルセルフレジ”を採用しています。私たちは『バーコードが読み込めない』といったお客様の対応をしますが、『(操作を)教えるヒマがあるなら、あなたがやってよ!』と言ってくる方も少なくない。1人に対応すると、それを見ていたお客様が次から次に『俺も、私もやって』となってしまう。有人レジより余計な手間が増えた印象です」(前出・40代女性パート店員)
メーカーによって異なるセルフレジの操作も、混乱に拍車をかける一因だ。同じ商品を複数購入した際、操作によって一度で精算できるレジもあれば、ひとつずつバーコードを読み取らなければならないレジもある。こういった点が利用客にも大きなストレスになっている。
万引きを疑って声掛けすると怒り出すケースも
一方で、セルフレジを悪用した「万引き」も増加傾向にあるという。別の都内スーパーの40代男性店長の話。
「バーコードの読み取りミスなどから『誤って精算前の商品を持ち出してしまった』というケースが増えています。店側も、マニュアルで定めた“特に不審なケース”ではお客様に声掛けしますが、“うっかり”の場合もあるので、判断が難しい。そうしたケースはお客様が“あらぬ疑いをかけられた”と怒り出すなどしてトラブルになりやすく、悩ましい問題です。精算を巡るトラブルは、有人レジ時代に比べて圧倒的に増えていますね」
5月14日には和歌山市のスーパーで、商品に「半額シール」を不正に貼り付け、セルフレジで精算した男性が電子計算機使用詐欺の容疑で逮捕されたことが話題になった。そうしたセルフレジを悪用しようとする行為を監視しながら、“単なるうっかりではないか?”と気遣うことの負担は決して小さくないだろう。
客側は精算時のトラブル防止にレシートの確認を
もちろん、消費者の嘆きの声も聞こえてくる。70代後半の男性がぼやく。
「どの店でも私が操作していると店員さんが駆け寄ってくる。恐らく、『レジの使い方が分からない爺さん』『精算ミスをする』と思われているからでしょう。これが不愉快でたまらない(苦笑)。初見の店で、勝手が違うセルフレジの操作にまごつき、後ろの若い客から舌打ちされたことも。以来、自分は近所の店しか行かなくなりました。日常使いしていた飲食チェーンでもタッチパネル注文が導入され、ハードルが高くなった感じ。気軽に買い物や食事が出来なくなってきたなぁ……」
消費生活アドバイザー・丸山晴美氏が指摘する。
「人員削減等のニーズから、今後もセルフレジの需要は拡大すると考えます。そうしたなか、店舗と利用者の間で、思わぬ行き違いが生じることも往々にしてあるでしょう。たとえばスーパーやコンビニなどでバーコードのない『3割引』や『半額』シールだけが商品に添付されていた場合、(セルフレジの)バーコードと対応していないこともあります。私がやっている方法ですが、精算時のトラブル防止のため、セルフレジでは必ずレシート・領収証を受け取って、間違いがないかチェックしましょう」
いまや日本国内でも、大手衣類量販店のように「かごを読み取り機に置くだけで精算」できるシステムもある。企業の利便性追求は続くのだろうが、消費者にも店員にも優しいシステムや運用のあり方を検討していくことも重要だろう。(了)
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