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東海道新幹線の最新車両N700S。

2020年03月23日

知らぬ間に進んでいたJR東海「テキサス新幹線」

 アメリカ合衆国運輸省の連邦鉄道局(FRA)が、テキサス州で進んでいる高速鉄道計画に関する安全基準案を3月10日に公表した。新幹線方式を前提に計画が進んでいるテキサス高速鉄道にとっては、大きな前進となる。

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 同計画はダラス―ヒューストン間(約380km)に専用線を建設し90分で結ぶというもので、事業を担うのはテキサスセントラル(TC)という民間会社。JR東海が技術面でのアドバイスを行う。当初はN700系の国際仕様「N700-i」を走らせる予定だったが、現在は7月から営業運転を行うN700Sをアメリカ仕様に改良して、最高時速330kmで走る計画になっている。

 計画は遅れており、当初は2021年の開業を目指していた。現在は2020年中の着工、2026年の営業運転開始が目標だ。

■車両はN700S

 遅れているとは言いながらも、計画は少しずつ進んでいる。運行パートナーとしてスペインの政府系鉄道会社「レンフェ(renfe)」が参加し、土木工事や関連施設の建設を担う建設会社とも契約が結ばれるなど、プレーヤーもそろってきた。

 N700Sをベースとした車両のイメージも発表された。客室のシートは通路をはさんで横に2席ずつ。2席と3席の組み合わせが主流の日本の新幹線よりもゆったりとしている。TCは「航空機よりも座席は広く、前後の座席との間隔も長く、窓も大きく、シートベルトを締める必要もない」として、航空機に対する優位性を強調する。日本人にとっては当たり前の情報だが、高速鉄道での移動になじみがないアメリカ人に対しては伝えるべき情報なのだろう。

 テキサス高速鉄道はアメリカでこれまで走っていた鉄道とはまったく違うシステムである。長大な貨物列車が悠然と走るアメリカの鉄道にそのまま高速列車を走らせると、前を走る列車に衝突してしまうリスクがある。また踏切で立ち往生した大型トラックなどの自動車に衝突するリスクもある。そこで、テキサス高速鉄道は新幹線のような専用線方式でATC(自動列車制御装置)を採用、踏切もゼロにすることで、衝突リスクを徹底的に排除した。



 アメリカになかった鉄道の仕組みだけに、従来の鉄道の安全基準はテキサス高速鉄道には当てはまらない。例えば、従来の安全基準では、鉄道車両は衝突リスクを前提に頑丈な構造にする必要があるが、衝突リスクがない新幹線方式の場合は、車両の設計要件も違ってくる。

 そこでTCは2016年、テキサス高速鉄道に特化した新たな安全基準の作成をFRAに申請した。FRAは約3年かけて新幹線の安全性や日本の状況を調査。問題ないと判断され、2019年8月に特定のプロジェクトにのみ適用される安全基準である連邦規則案(Rule of Particular Applicability)の制定に向けた手続きを開始した。それから半年後、連邦規則案がようやく完成し、3月10日に公表されたというわけだ。

 内容は車両、信号、運行管理システム、運行手順、保守など多岐にわたり、踏切がないことも明記されている。また、「鉄道業界全般ではなくテキサス高速鉄道だけに適用される」というただし書きがある。こうした特定の路線に限った安全基準が作成されるのは「極めて異例」とアメリカの鉄道事情に詳しいJR関係者が話す。

■「日本の新幹線」をアメリカ当局が評価

 JR東海の担当者は、「連邦規則の制定はプロジェクトの実現に向けて欠かすことのできない要素であることから、連邦規則案が公示されたことは、プロジェクトにとって非常に大きな前進である」という。

 これまでは、アメリカの安全基準を満たさない日本の新幹線が本当にアメリカ国内を走れるのか、といった懸念もくすぶっていたが、走行には問題ないと当局が認める意義は大きい。さらにこの連邦規則案では、テキサス高速鉄道のコアシステムは東海道新幹線のシステムを複製し、東海道新幹線が1964年の開業以来約60億人が利用し、乗車中の乗客が死亡に至る列車事故が起きていないことが、信頼性を示すものとして触れられている。アメリカの当局が新幹線をきちんと評価していることが読み取れる。


 この連邦規則案は5月11日まで2カ月にわたってパブリックコメントが募られる。それを踏まえて特段の問題がなければ、必要な修正を経てテキサス高速鉄道の連邦規則として認められるわけだ。

 連邦政府の官報には3月18日時点で8件のパブリックコメントが寄せられている。ただ、コメントの中には「日本人がテキサスの土地を所有する」といった誤解も見られ、市民の理解が不十分であることを感じさせた。

 新線の建設に際しては、周辺の環境に与える影響を見極め、その対策を講じることも必要だ。これは環境影響評価(環境アセスメント)と呼ばれ、日本でもJR東日本が計画中の羽田アクセス線が現在、環境影響評価の真っ最中だ。

 テキサス高速鉄道の環境影響評価手続きは2014年にスタートした。その後、報告書案の作成、報告書案への意見募集(パブリックコメント)を経て、現在は最終環境影響報告書の公表を待つ段階。これが公表されると、改めて意見募集が行われ、必要な修正を行ったうえで環境影響評価手続きが終了する。

 安全基準と環境影響評価は、高速鉄道計画を実現するため必ずクリアしなくてはならないハードルだった。ようやく、どちらもゴールが見えてきた。

■大統領選や新型コロナの影響は? 

 残るハードルは資金調達だ。現在想定されている総事業費は200億ドル(2兆1400億円)で、当初計画の120億ドル(1兆2840億円)から大幅に増えた。州政府などの補助も見込むが、主として民間から資金を募る計画だ。日本の国際協力銀行(JBIC)と海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)が出資する特別目的事業体(SPV)が最大3億ドル(321億円)の資金を貸し付けることが2018年に決まっているが、全体から見れば微々たるものだ。

 一足先にカリフォルニア州でも高速鉄道計画が2015年に着工となったが、資金集めが難航。結局、コストがかかりすぎるとして建設計画は大幅な見直しを余儀なくされた。

 新型コロナウィルスの影響が長引けばアメリカにおける投資マインドが冷え込み、資金調達に影響が出ないとも限らない。一方で、民主党の次期大統領候補に名乗りを上げたジョー・バイデン前副大統領は、人の移動が安全で効率的になり、環境に優しいとして鉄道の拡張を支持しており、「高速鉄道に投資する」という政策を掲げている。カリフォルニア高速鉄道計画の完遂やワシントンDC―ニューヨーク間の鉄道高速化が例として挙げられている。ただし、テキサス高速鉄道への言及はない。

 テキサス州は伝統的に共和党が強い州である。テキサス高速鉄道の進展には安倍晋三首相によるトランプ大統領への働きかけが奏功しているとしたら、仮にバイデン氏が大統領になった場合、テキサス州の高速鉄道計画はどちらに転ぶか。

 ウイルスから政局までさまざまな要因がテキサス高速鉄道に影響を及している。TCとしては、沿線へのPRを含め、目先でできることを粛々と行っていくしかないだろう。




引用元の記事はこちら(https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200323-00338286-toyo-bus_all)


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